医療費控除における節税法…「生計を一」の活用

ミステリーばかり読んで全く税法の勉強をしていないと思われても困りますので、ほとんどの方が興味ある節税法について少しばかり書こうと思います。

前回、節税、脱税、租税回避について少し説明しましたが、簡単に言うと節税は、税法等に則って、合法的に税金を少なくすることです。
また、各種の所得控除や非課税制度を活用して、税金の軽減をはかることですので、今回は医療費控除の申告者について考えていきたいと思います。

「生計を一」とは

自分で確定申告をしたことがある人は、確定申告の手引きなどで目にしたことがあると思いますが、所得税の申告においては「生計を一」ということばがよく出てきます。

例えば、災害や盗難、横領によって住宅や家財などに損害を受けた場合に控除できる雑損控除は、「生計を一にする総所得金額等が38万円以下の配偶者その他の親族」の住宅や家財が対象となります。

医療費控除は、「生計を一にする配偶者その他の親族」のために支払った医療費も対象となります。

社会保険料控除も、「あなたや生計を一にする配偶者その他の親族」が負担することになっている社会保険料が対象となります。

確定申告において、よく勘違いされる「生計を一」についてですが、

生計を一にする

日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

平成30年分所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(国税庁作成)

当然、国税庁作成の手引きなので間違いではありませんが、これを見た納税者の方は扶養している子供や親族などが大学や入院した時のイメージしか持てないと思います。

該当条文(通達)

次に、税務職員が守らなくてはいけないルールとしての、所得税基本通達2-47には以下のように記載されています。

(生計を一にするの意義)
2-47 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

 イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
 ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、
明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

前述、手引きには、通達の(2)に関する記載がないことが勘違いの原因となります。
そのため、医療費控除の申告をする方に損をするケースが多くみられます。

それぞれのケースによる例示

《事例》

Aさん一家は、市内のAさんの父親の持ち家で5人で暮らしています。

Aさん(会社員、40歳)
妻(専業主婦、35歳)
子(小学生、10歳)
Aさんの父親(年金、67歳)
Aさんの母親(専業主婦、65歳)

Aさんは給与収入が700万円、Aさんの父親は年金収入が250万円あり、それぞれの妻を扶養しています。

このようなケースでのAさん一家の年間の所得税はほとんどの方が以下のとおり計算しています。
※計算を簡単にするために配偶者控除、基礎控除以外は考慮しません。

Aさんの所得税
 給与収入700万円→給与所得510万円
 給与所得510万円-配偶者控除38万円-基礎控除38万円=課税所得434万円
 ※子は10歳のため扶養控除対象外

 課税所得4,340,000円×0.2-427,500円=所得税440,500円

Aさんの父親の所得税
 年金収入250万円→雑所得130万円
 雑所得130万円-配偶者控除38万円-基礎控除38万円=課税所得54万円

 課税所得540,000×0.05=27,000円

Aさん一家の所得税
 Aさんの所得税440,500円+Aさんの父親の所得税27,000円=467,500円

それでは、Aさん一家で医療費を支払ったケースについて考えてみたいと思います。

医療費控除の計算例(ケース1)

例えばAさんとAさんの妻及び子で15万円医療費を支払い、Aさんの父母が25万円の医療費を支払ったケースを考えてみましょう。
多くの人は、扶養している人の医療費は扶養者でしか控除できないと勘違いしています。
ですから、そのケースだと、

Aさんの所得税
 通常の課税所得4,340,000円-医療費控除額(150,000円-100,000円)=課税所得4,290,000円
 
課税所得4,290,000円×0.2-427,500円=所得税430,500円

Aさんの父親の所得税
 通常の課税所得540,000円-医療費控除額(250,000円-1,300,000円×0.05)=課税所得355,000円

 課税所得355,000円×0.05=所得税17,750円→17,700円(100円未満切捨て)

Aさん一家の所得税
 Aさんの所得税430,500円+Aさんの父親の所得税17,700円=448,200円


次に、Aさんが、「生計を一」を理解している場合は、同居しているAさんとAさんの父親はそれぞれの扶養関係とは関係なしに、医療費をすべて所得税率の高いAさんから控除します。

医療費控除の計算例(ケース2)

Aさんの所得税
 通常の課税所得4,340,000円-医療費控除額(400,000円-100,000円)=課税所得4,040,000円

 課税所得4,040,000円×0.2-427,500円=所得税380,500円

Aさんの父親の所得税
 通常の課税所得540,000円×0.05=所得税27,000円

Aさん一家の所得税

 Aさんの所得税380,500円+Aさんの父親の所得税27,000円=407,500円
結果として、「生計を一」をきちんと理解しているケースでは

448,200円-407,500円=40,700円得をすることになります。

しかも申告は一人分なので手間も減ります。
このように、ちょっとしたことがわかるだけで税金を減らすことができます。

日本人は他人のお金、特に自分の父母の財政状態を聞くことに抵抗あるかと思いますが、税金は払いすぎる必要はありませんので、特に医療費控除の申告はとても多いことからぜひ「生計を一」を活用してみてください。

なお、このケースでは、母親を申告の際にAさんの扶養控除対象者に変更することや、更に父母を社会保険上の扶養親族にということも考えられますが、いろいろな方法により節税は可能です。
今回は「生計を一」の話ということですので、その他のケースにつきましては今後アップしていきたいと思います。