節税・脱税・租税回避について
税理士の長谷川です。
税理士のホームページには、よく「節税のお手伝いをします!」というフレーズがあります。
このホームページ上にも控えめに載せています。
それとは別に「脱税」という言葉も聞いたことがあると思います。
この「節税」と「脱税」の違い、わかりますか?
今回は、この「節税」、「脱税」と、もうひとつ「租税回避」について簡単に説明したいと思います。
節税とは
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「法の想定する範囲」という文言が気になりますが、次に広辞苑では、
各種の所得控除や非課税制度を活用して、税金の軽減をはかること。
広辞苑
こちらは非常に分かりやすく、いわゆる税法の範囲内で税負担を減少させることですね。
例えば、
・ふるさと納税により寄付金控除を受け納税額を減らす
・個人事業主の方は、青色申告をして65万円の特別控除を受ける
・ 税法の特別償却や特別控除を利用して税金を減少させる
などというのが「節税」ということになります。
節税については、年度が終わった後では出来ることは少ないですので、早め早めに対策を考えることが重要となります。
脱税とは
日本では、脱税は「偽りその他不正な行為」により納税を免れる行為のことである。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
納税義務者が義務の履行を怠り、納税額の一部または全部をのがれる行為。逋税ほぜい。
広辞苑
脱税とは、違法に税金を減らす行為を指します。
法律違反であることが脱税のポイントです。
例えば、
・売上を除外して、納税金額を減らした
・架空の経費を計上して所得を圧縮し、納税金額を減らした
などです。
「国税局査察部」というのを耳にしたことがある人もいるかと思いますが、このような脱税犯に対しては、捜査令状を持って捜査します。
なお、日本の脱税犯については、所得税法・法人税法等の各税法に基づいて、一般的に10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金となっています。
現実には脱税が発覚しても、すべてが刑事事件になるわけではなく、金額が小さいため、刑事事件とならないケースも非常に多いです。
しかし、脱税の罰則は上記の通り、かなり厳しいため、刑事事件として扱われてしまうとかなりの痛手を負い、また最近は国税が査察事件の公表を積極的にしていることから脱税犯として永遠にネットに名前が出ないように、絶対に脱税行為はしてはなりません。
租税回避とは
通常、私人は租税の支払いを逃れようとする。このとき、普通の法形式を使わずに、経済的合理性のない「異常な」法形式による取引(私法上の選択可能性の濫用)を行うことで、租税負担を回避することを「租税回避」と呼ぶ。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
通常、私人は租税の支払いを逃れようとする…
フリー百科事典ですからしようがないですね。
次に、広辞苑では、
通常用いられない法形式を利用して課税要件の充足を免れ、税負担を減少させあるいは排除する行為。節税に対して、租税法規が予定していない行為をいう。
広辞苑
税法はすべてを完全に規定しているわけではありません。
租税回避とは、税法が想定していない法形式を利用して税負担を減少させようとする行為を指しています。
要するに、 行為の1つ1つは合法ですが、 通常ではありえない不自然、不合理な取引形態を使い課税要件をくぐり抜けることを指します。
言い換えると、法の抜け穴を突いて、課税を逃れようとする行為と言えます。
近年では、一部の大企業・富裕層の租税回避が問題になっています。
パナマ文書の情報流出事件などは記憶に新しいと思います。
また、2018年秋に、日本人や日本の法人などが、租税回避地(タックスヘイブン)も含む、海外64カ国・地域に持つ約55万件の金融口座情報を入手したとの報道もありました。
租税回避は、課税の公平に反する行為ですので、世界的にも租税回避防止の取り組みは議論されています。
とはいえ、税の専門家である税理士として求められるもののひとつとして、税負担の軽減があります。
そのため、どうしても租税回避を考えたくなるんですよね。